完全な夢物語(随時書き直し、更新中)

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完全な夢物語(随時書き直し、更新中)




邪竜族を倒した、輝かしい英雄譚から早1年
パフリシア王国の再建を担うパッフィー、イズミと別れ
アデューは相変わらず世界一の騎士を目指す旅を続けていた
それに同行するのは修行による自己鍛練と日の出国への帰還を目指す、サルトビ、月心
相変わらず悪態をつきあうアデューとサルトビを月心が仲裁しながら進めていく
邪竜族と名も知れぬ英雄達との戦いの話は、英雄譚として少しずつ各地に語られ、
ならず者たちがのさばっていた国も平和を取り戻し、賞金首も少なくなっていた
賞金も期待できない、パッフィー、イズミからの用心棒代も出なくなった貧乏旅行だったが、
何故か意外とうまくいっている、そんな三人旅だった


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ここはウエストガンズの酒場
荒くれ者が多く、荒廃したこの地の治安は悪い
ものものしい声が飛び交うこの町の酒場で
アデュー、サルトビ、月心は
旅に必要な情報を集めていた

旅の資金を稼ぐための短期間の仕事はないか
手合わせを願える強い者の情報はないか
町の人を悩ませているモンスターの情報などといったものだ

この町に留まって二日目
今日も、稼ぎにつながるような大した情報はなく、
三人は酒場をあとにしようとしていた

酒場のマスターからの情報収集から戻ってきたサルトビが二人に声をかける
「そろそろずらかるか」

アデューがお腹をさすりながらぼやく
「あ〜最近腹いっぱい食べてないなぁ〜」

「拙者もだ。今日の分はなんとか払えると思うが…」
財布係の月心が小銭の重さを確認しながら、一足先に会計に向かう
サルトビがその後を追い、
アデューはトボトボと店のメニューを見ながら付いていった

「あ〜 うまそ〜 骨付き肉ぅ…」

だが、ない袖は振れない。
溜息を一つ、ふと横を見ると、アデューと同じメニューを見ていた
黒ずくめの小柄な男がいた

男はチラチラメニューを見ながら、注文する者や、店員の動きを観察しているようだった。

(なにやってんだ…?)

アデューがいぶかしげに男に近づく。
厚い黒いコートに、黒いフードを被っている。
靴もしっかりしており、金を持っていない身なりではない。

「なぁあんた、注文の仕方でもわからないのかい?」
アデューが黒フードに覆われていた顔を覗き込もうと、おもいきり腰を折り、頭を下げて男の顔を見る

男の眼前に、急にアデューの顔が表れた
真っすぐに伸びた赤毛に緑色の大きい目。上目づかいに見ているその顔は
まだ幼さの残る少年なのだが、あたらしいおもちゃに興味を惹かれている、緑色の目の猫のようにも見えた
急に表れた顔に、黒ずくめの男は驚く。

それと同時にアデューも黒フードの中を見て驚いた
黒ずくめの衣装にはとても似つかわしくない
透きとおった肌、澄んだ目、整った輪郭の人物がそこにはいた

顔を見た途端、心臓は大きく波を打ち始め、咄嗟に姿勢を元に戻したアデュー
驚いた黒ずくめの男は逃げるように酒場を出て行ってしまった

「おいアデュー、帰るぞ」
茫然と立ち尽くす悪友にサルトビが声をかける

「あ、あぁ…」
アデューは何か不思議な違和感を抱えたまま
月心、サルトビに続き店を出た



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ドンッ…

勢いよく酒場から飛び出したその男は、
運悪く柄の悪そうな大男にぶつかってしまった

慌てて店を出たからなのか、顔を下までおおっている黒いフードのせいか、治安が悪く夜になると真っ暗になる町のせいなのか
フードの男はまったく前を確認できていなかったのだ


「いってぇ〜…」
大男は大きな手で腰を押さえながら低い声でつぶやき、ゆっくりとぶつかった者の方に体を向ける

「おい、テメーどこみてんだ!?」
すかさず隣にいた細い男が、黒ずくめの男に詰め寄る
大男はじっと立っている。どうやら細男の方が威勢がいいようだ

「あ、あの…すみません、あの…」
まだ変声期前だろうか
詰め寄っている細男より遙かに小柄な黒ずくめの男はか細い声を絞り出していた

「あ〜ん?なんだよ、聞こえねぇなぁ!」

細男が黒フードをつかみ、はがそうとする
黒ずくめの男はそれを必至に阻止しようと、フードを押さえるが、
抵抗の甲斐なく、フードをはがされてしまった。

「ん?ん〜??」
細男がいぶかしげにフードをはがされた男の顔を見る

黒ずくめの男は細男とは逆の方向に、必至に顔をそらし続けている
動きがなかった大男も興味をひかれたのかフードを剥がされた顔を覗き込む

「オメェ…… オンナだなぁ??」
オンナと呼ばれた黒ずくめの男は下唇をかみしめたまま、必至に頭を振っている

黒いフードを完全に剥がし、腕を掴んだまま強引に歩かせ、
細男が外の酒樽の上に座っていた男に誇らしげに女を突き出す
「ボス!上玉の女を捕まえましたぜ!!」

ボスとよばれたその男は、すぐさま酒樽から立ち上がり、
ごつごつした浅黒い手で女のアゴをつかみ顔を見る
「ほぉ… いい女だ。連れてけ」

「や、ヤメロ!離せ!!オレは男だ!!!」
女は男達の手を振りほどこうと必至にもがくが、
アゴでボスから支持を受けた大男が華奢な体のみぞおちに拳を入れると

途端に意識を失い、ぐったりしてしまった
大男が女を担ぎ、3人はさらに暗い闇へと歩き出した

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酒場を出ると、夜の冷えた風が当たった
ただでさえ飲めない、腹いっぱい食べられない
遊ぶ金もなく、後は宿屋へ一直線

これが世界を救ったヒーロー達の姿だろうか
アデューが食べ物でも落ちてないかと悪あがきで周りを見渡すと
何やら遠くで黒い影がモメているのが見えた

「ん… あれは…」
目がいいアデューが何かに気付く

さっき酒場で見かけたの黒フードが
大きい男と細い男にからまれていたのだ

さらに近づこうとするアデューを、サルトビが制止する
「おい、厄介事に巻き込まれるのはごめんだぜ」

先を行っていた月心がなかなか来ない二人を心配して戻ってきた
「どうした。ん?何やら向こうが騒がしいな」

「アデューのやつ、また一銭にもならねぇことに首つっこもうとしてやがるんだ」

「うむ… しかし相手は二人に一人… 黙ってみているわけにもいかんだろう」

そうこうしている内に黒い人影が動く
からまれている者は、さらに暗い闇へ連れて行かれてしまった

アデューがすかさず走りだす

「おいアデュー!っくそ…あの音速バカが!」

月心、サルトビがアデューに続き闇へと走り出した


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3人が助けに付くころには、
ガラの悪い男達は黒ずくめの女を抱え、さらに深い闇へと消えようとしていた

「おい、まて〜!!!」
誰よりも早くかけつけたアデューが咄嗟に声をかける。

「そいつを離せ!!」

「あん?なんだオメェ?こいつの知り合いかぁ?」
すかさず細男が大男の前にでる

「あぁ知ってる!だからそいつを離せ!!!」

「ハァ?バカかオメェ?チッ…いくぞ!」
細男が尖ったアゴで大男の歩を促す

「待てって言ってるだろ!騎士道大原則、ひとぉ〜つ!
騎士は、弱き者を助けなければならない!
二人がかりで一人を襲うなんて、卑怯じゃないかっ!!」

「三人だがな」
闇からいきなり現れた男がアデューに向けて銃を撃つ

放たれた弾が、アデューの太ももをかすめた
「…ィッテ」

思ったより傷が深く、ひざまづいてしまったアデューが
やりかえそうと背中の剣に手をかけたと同時に
サルトビの手裏剣が男の手の甲に当たり、銃を弾き飛ばした

いつのまにか駆けつけていた月心の剣先は細男の尖った顎に据えられている


やっとこさアデューが剣を抜き、
黒ずくめを担いで手がふさがっている大男の前で構えて言う
「そいつを離せ」


手裏剣で傷めた左手を抑えているボスに顎で促され、
大男は地面に黒ずくめを放った
相変わらず気を失ったまま、黒ずくめは地面にうつぶせに置かれ、ぐったりしていた

剣先を据えたまま、月心とアデューが3人を威嚇する
その後ろで、サルトビがあることに気付く

「…!
こいつら隣町で見たお尋ね者じゃねぇか!
アデュー、月心、取り押さえるぞ!!」

逃げ出す3人のお尋ね者の前方に、すかさずサルトビがまきびしを投げる

「チェストォー!」
月心は隙だらけの大男と細男にみねうちを食らわした

「だぁああーー!!」
アデューはというと、ボスの顔面めがけて
飛び蹴りを繰り出していた

あっという間にアデュー達の足元に動けなくなってピクピクしている3人が転がる

「ハッ!俺達に見つかるなんざ、運が悪かったな!」
悪党達の手に器用に縄をしばっていくサルトビ

「アデュー、オレと月心でこいつらを保安官に引き渡してから宿に戻る
その伸びてるやつは、お前がどうにかしろよ」

「金に困っていたのに運がいい、窮地に一生を得るとは、まさにこのことだな!ハッハッハッハ…」

気を失ってうつぶせに倒れているままの黒ずくめをアデューに任せ、
旅の資金源を手にいれ、上機嫌の二人は
縄の前後に付き、お尋ね者3人を歩かせ、夜の街に消えていった


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「おい、あんた大丈夫か?」
残されたアデューはぐったりとうつ伏せに倒れている黒ずくめを起こした

先ほど酒場で見たときとは違い、
黒いマントは泥で汚れ、黒いフードもはがれていた

酒場で一瞬見た時の透きとおった肌も澄んだ目も確認できないが、
ただ、整った輪郭はそのままだった。
間違いない、こいつはさっき酒場で顔を見た黒ずくめのオト…
……
オトコ?

抱きかかえてみると、黒ずくめは男とも少年とも到底思えないほど華奢な体つきだった

「女の子…?」

相手が誰であれ、目を覚まさない人を残しておくわけにもいかず、
アデューは戸惑いながらも、うんともすんとも反応のない
黒ずくめを抱きかかえ、数日前から世話になっている、町外れの宿へと歩きだした

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黒ずくめを抱き抱えたまま、アデューが宿に着いた
町外れにあるその宿は多くの宿泊客を泊められるほど大きくは無かったが、
元冒険者のダルクという男の手によって作られ、その造りはしっかりしていた
ダルクは宿の主人をしており、根はやさしいが外見は強面なので荒くれ者も滅多に宿荒らしに来ない
冒険者には破格の値段で泊めてくれる、情報収集が得意なサルトビが見つけた、穴場な宿だった

「マスター、かえったよー」
アデューが黒ずくめを抱きかかえたまま、重い宿の玄関ドアを体で押しあけると、
来客を知らせるベルがゆっくりチリンと鳴る
いつもカウンターにいるその宿の主人は席を外しているようだった

「マスター!いないのー?
うーん…困ったなぁ、余ってるベッドがあれば貸してもらおうと思ったんだけど…」
仕方なくアデューは自分達の借りている二階の一室へと向かう

部屋の明かりが点いていない
サルトビと月心はまだ戻ってきてないようだ
ドアを押し開けると、出て行ったままの状態で無骨に並ぶベッドが3つ

アデューはひとまず自分が使っていた、一番手前のベッドに黒ずくめを寝かせると、
壁に掛けられているランプの明かりを点けた
薄暗い部屋が薄いオレンジ色に染まる
大分長い距離を歩いたが、黒ずくめが予想外に軽かったため、アデューの腕は全く痛くない
運んでいる途中も全く目を覚まさなかった黒ずくめの両肩をゆすり、大きな声で呼びかけてみる
「おいあんた、しっかりしろ!おい」

揺さぶれど声をかけど、一向に目を覚まさない黒ずくめ
だが、少しずつではあるが、頬に赤みが戻ってきており、
まじまじと見ると、柔らかそうな肌の質感、長いまつげ、ピンク色の艶がいい唇が確認できる
ここに横になっているのは、自分とそう年の変わらない女の子だということに
アデューは確信を持ち始めていた

この町の娘だろうか、旅人だろうか
仲間はいるのだろうか、心配していないのだろうか
なぜこんな格好をしているのだろう
しばらく少女の神秘的な魅力に魅入ってしまったアデューだったが、
ハッと気づいたように立ち上がり、
気付け薬をもらおうと、宿の主人を探しに部屋を後にした


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「いやぁしかし、思わぬ収入だったでござるな」
「本当だぜ!たまにはあの音速バカにも感謝しないとな」

街の保安官に賞金首を引き渡し、
報奨金をもらったサルトビと月心は意気揚揚と宿屋に着いた
各町を荒らしてきたタチの悪い3人を一度に捕獲できたことで、報奨金の入っている袋はズッシリと重い
やっと一息つけると勢いよく自分たちの部屋のドアをあけたサルトビは飛び上った

「うわぁっ」
一瞬部屋を間違えたかと、サルトビが入口の番号を確認するが、
間違いない、ここは昨日泊まったままの部屋だった

だが何かがおかしい
昨日にはない光景、それはアデューのベッドに女の子が横たわっているということだ

「遅かったな!」
アデューが後ろから声をかける

「うわぁっ」
まだ状況を飲み込めないサルトビが、さらに飛び上がる

月心が慎重に状況を確認する
「アデュー、このお嬢さんは…」

「さっきのコだよ。襲われてた。全然起きないから、マスターに気付け薬ないか探しに行ったんだけど居なかった
サルトビ、持ってないか?」

「拙者が持っている。アデュー、これを使え」
月心が懐から薬紙をアデューに手渡した。

「お!サンキュー、月心!」

アデューはベッドに横たわる女の子の青白くなった唇を軽くあけると、
そこへ粉薬と自分が携帯している水筒の水をすべり込ませた

「ぐっ…うっ… こほっ!ごほっ…!!!」
しばらくして女の子が目を覚ます。アデュー達3人は、その様子を固唾を飲んで見守っていた

「気がついたかい?」
アデューが女の子の顔を覗き込みながら声をかける

目を覚ました女の子は、どこか見覚えのある緑色の目を持つ顔を確認した後、周りを見渡す
話しかけた少年の左にするどい目つきで長身の覆面の男、
その左に髪を結っているがっしりとした大きい体系の男
自分の黒いフード、マントはほとんど剥がされて、
下に着ていたクリーム色のワンピースがほとんど見えている

焦りの表情をあらわにする彼女に、アデューは再度声をかける
「あんた、酒場に居た子だろ?外で3人組の族にからまれて、さっきまで気を失ってたんだけど、覚えてるかい?」

しばらく下を見つめ目を泳がせ、女の子は運悪く男にぶつかり、捕まってしまったところまで思い出した
「はい、覚えてます…。あの…皆さんは…助けてくださったんですか?ありがとうございます。」

「大きな傷はないみたいだけど…立てるかい?」

「はい…」

みぞおちに鈍い痛みを感じながらも、女の子はゆっくりと立ち上がった
マントの下の持ち物が無くなっていない事を確認し、フードを深くかぶり、一礼した
「あの…、本当にありがとうございました。これはほんの気持です」

慌ただしい動作で手持ちの布袋を探った後、差し出された手のひらには数枚のコインが置かれていた。

「いいっていいって、倒したあいつらは賞金首で、こっちもおいしい思いはさせてもらったし」

「くれるってんだから、もらっておけばいいじゃねぇか、アデュー」とサルトビ

「いや、我々もそんな大それたことはしておらぬ、心遣いだけで結構でござる。お納めくだされ」
月心が続ける
「お主、旅のものか?夜道も暗い、帰るのであれば、仲間のところまで案内いたそうか?」

「い、いえ、大丈夫です。あの、本当にありがとうございました」
差し出したコインをしまい、フードを被ったままそう言い終わると、女の子はそそくさと部屋を出て行った

「なんだあの態度、こちとら助けてやったってのに」

「うむ…」

「あ、ねぇちょっと!!」
アデューだけは女の子の後を追い、部屋を出た

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宿を出、前を早歩きで歩く人影を見つけ、すかさずアデューがかけよる

「途中まで送るよ!」

影は止まり、駆け寄ってきたアデューに返した
「あの…本当に、一人で帰れますから…」

もはや目も合わせずうつむいてる黒ずくめ言葉に、アデューがかぶせる
「騎士道大原則ひとつ! 騎士たる者、弱者を救わねばならない、特に女子供は守らねばならない!
帰り道でまた何かあると心配だからな、ちゃんと最後まで送らせてくれ!」

女の子は遠慮勝ちにアデューを見つめて言った
「騎士…?」

「あぁ、俺の名前はアデュー・ウォルサム!人呼んで、音速のアデュー!
アースティア一の騎士を目指して旅をしてる。
あんたもそんな格好してるってことは、魔法使いかなにかか?」

「いえ…私は…」
女の子が口ごもる

「ふーん、まっ、言いたくないなら言わなくていいけどな!とにかく、俺は騎士の名に恥じぬよう、
君を無事に家まで送り届けるつもりだ」
人差し指を立てながら、誇らしげに語るアデュー
アースティアを救った男は、変わらず騎士としての信念を持ち続けていた

騎士と語ったその男の顔を、女の子はじっと見つめた。
何かを確かめているようだった。
その瞳の先には、力強い意思を物語っている太く上がった眉と、曇りのない緑色の瞳が映っていた。

女の子はうつむき、小さくうなずいてから少しずつ口を開いていった
「私は…エリーと申します。旅人です。今は一人で旅をしています…」

「一人で旅をしてきただって?」

驚くアデューに小さくゆっくり、エリーは頷いた

「女の子が一人で旅をして、危険な目とかに会わなかったのか?」

エリーはギュッと唇を噛みしめたあと、目を伏せ、ほとんど聞こえないくらい小さな声で返す
「はい…ですから、できるだけ目立たないようにして、旅をしています」

「そうだったのか…、それで、今日泊まるところはあるのかい?」

「いえ…夕方この町に着いたばかりで…まだ決まっていません…」


「ん〜…」
アデューが腕を組み、目を閉じて考え込む

「よし、きめた! エリー、今日のところは俺達の宿に泊まれよ、
部屋が空いてるか、マスターに聞いてみるからさ!」

「おーい!マスター!!!」
そう言うとアデューはあっという間に宿の方に走り去って行ってしまった。

町外れの宿の周りには森が茂り、
アデューがいなくなるとフクロウの声が不気味に響いた
エリーと名乗った少女ははただならぬ恐怖を感じ、足早に赤いマントの背中をおいかけた

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宿に帰ると、席に戻った宿屋の主人に月心、サルトビがカウンターで宿代の支払いをしていた

「マスター!」
アデューが勢いよく玄関を押しあけ、ベルを鳴らす

「おい小僧、俺ん家の玄関を壊す気か!」
宿屋の主人、ダルクが体を乗り出し、月心ごしにアデューを怒鳴る

「はは、ごめんごめん、ところでさ、今日泊まれる部屋余ってない?
一人泊めたいんだけど…」

アデューがそう言い終わったところで、再び玄関ドアがチリンと鳴った

エリーがカウンターに揃った4人に圧倒されながら、中に入る

「おう、お一人さん?部屋なら空いてるぜ、待ってな」
そう言うと、ダルクは後方のドアを開け、部屋の鍵を取り出した

「入口の鍵がしっかりしたやつだから、女の子一人でも大丈夫だ、安心しな
宿代は1日ずつ前払で、 ○ゴルゴル、あるか?」
エリーは小銭が入っている袋から指定されたコインをカウンターに置いた。

宿泊者名簿に記帳をしてもらっている最中、ダルクが聞く
「このお嬢さん、お前さん達の仲間かい?」

「いや、違…」
「まぁそんなところ!名前は、エリーだ。」
サルトビは言葉をかぶせたアデューに対し、こいつ何考えてやがんだという目つきで見る

そんなサルトビには目もくれず、記帳を終えたエリーにアデューが話す
「俺達の部屋とは逆側だな、部屋の前まで送るよ」

エリーは戸惑いながらも頷くと、月心、サルトビに深く頭を下げ、
アデューの後を付いていった

「さて、我々も戻ろう」
月心、サルトビは2階の自室に戻っていった



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「ただいまぁ」
エリーを部屋まで送り届けたアデューが自分達の部屋に戻った


「しかし、まさか女だったとはな」
三人揃ったところで、サルトビが一声を放った

「うむ…なに故あのような格好で町を歩いていたのだろうか」

「一人で旅をしてるって言ってたけど…」
アデューが話す

「てことは…護身用であんな格好をしてるってところか」
「そうでござろうな…」


電気が消え、床に就く三人

思い思いに、全身黒ずくめとは対照的な
男っぽさのカケラもないエリーの華奢な体、整った顔立ちを思い出し、眠りに落ちていった



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「やぁっ!」
「ふんっ… とぉ!」

朝露が残る早朝、宿の近くで声が響く。

毎日の日課のように、アデューと月心は剣の修行をしていた。


「うりゃぁーー!」
「む…っ!!!」
「スキあり!もらったぁ〜〜!…うっ!」

月心目掛けて踏み込んだ右足に違和感を覚え、
アデューは跪いてしまった


「どうしたアデュー、昨日の傷か?」

「ってて〜… あぁ、銃弾がかすっただけなんだけど、結構深かったみたいだ」

踏み込んだ時の衝撃でふさがりかけていた傷口が開いたのか、
アデューの右足の太ももには血が滲み、銃でかすめた傷は少し化膿しているようだった

「これはひどいな… 動かさずここで待っておれ、薬草を持ってこよう」
月心は足早に宿の中に入っていった

「ふぅ…」
おとなしくその場に座り、一息つくアデュー
ボーっと宿の入り口に目を向けると、宿の主人に一礼をし、ドアを開け出てくる黒ずくめが見えた

「おーいエリー!」
アデューが声を掛け、傷がある方の足を浮かしながら立ち上がり、ピョコピョコと歩を進める

すがすがしい朝には似つかわしくない黒ずくめに再び身をつつんでいたエリーは、
その声に反応し、アデューの姿を探した

歩きにくそうなアデューに駆け寄り、再び一礼をする
「アデューさん、昨日は本当に、ありがとうございました」

「いいっていいって!それより、朝早いんだね、用事でもあるの?」

「はい、今日にはこの街を出ようと思います。お仲間の方達にも、ありがとうございましたとお伝えください」


右ほほを掻きながら、アデューが返事をする
「そ…そっか、で、次はどこに行くんだい?」

「それはまだ決まってませんが…」
エリーが視線を落としながら話す。その時、アデューの足の傷に目が行った

「怪我…されたのですか…?」

アデューは恥ずかしそうに虚勢を張る
「あ、あぁこれ!大したことないよ、ちょっと昨日油断したスキに撃たれただけで、かすり傷ってやつ?ははははは!」

「昨日のって…例の3人組の…?」

「そそ、一人が銃で不意打ちしてきてさぁ、きったねぇよなーもっと正々堂々戦えってい…」
アデューの話が終わらない内に、エリーはしゃがみ、アデューの傷口に手をかざし始めた
目を閉じ、何かを祈っているような仕草をしている
しばらくすると、エリーの胸元から青い光がぼんやりと滲み、エリーの両手とその周りも青く光り始めた

「な…なんだぁ…」
アデューは呆然と立ち尽くしたまま、右足の傷に何か暖かいものを感じていた

しばらくすると青い光は小さくなり、やがて消え、エリーも目を開き、かざしていた両手を下ろす
両手がかざされていた傷口を見ると、
痛々しい赤みを帯びた傷が内面から肌の色を取り戻していた

「傷が…治った…?」

エリーが立ち上がり一呼吸を置く
「すみません、私のせいで怪我をさせてしまって…
私、心の中で祈ると傷を治すことができるみたいなんです
これで少し楽になればと思って…」

「エリーは、癒しの奇跡が使えるのか?」

「いやしのきせき…?」
エリーが不思議そうな顔をする

「い、いや、なんでもないんだ…!」
アデューがあたふたしてると、薬草を取りに行った月心が戻ってきた

「待たせたな、アデュー。おお、そなたは…エリー殿、だったかな」

「あ、おはようございます…その…」

「拙者は、月心と申す」

「月心さん。昨日は本当にありがとうございました」
エリーが深々と頭を下げる

「いやいや、昨日も言ったが、礼には及ばんよ。元気になられたようで、安心した」
手を上げ謙遜した月心は言葉の終わりにアデューに目をやると、足の傷が見当たらないことに気が付いた

「アデュー、お主、足はどうした?」

「あぁ!聞いてくれよ月心、エリーが傷を治してくれたんだ!」

「治した?…信じられん!エリー殿は、僧侶か何かであったか?」

「い、いえ、私は…」

「イズミみたいな、癒しの奇跡じゃないみたいなんだけど、青い光に包まれたと思ったら傷が治ったんだ」

改めて不思議そうにエリーを見つめる二人

エリーはすこしバツが悪そうに、遠慮がちに答えた
「あの…自分でも分からないんですが…私は強く念じることで色々な現象が起こるようなんです…」

月心がアゴに指を置き考える仕草を取る
「ふむ…、正体不明の力…とでも言うものか…」

しばらく沈黙する三人

エリーがハッとしたように、切り出す
「あっ、私、そろそろ行きます。月心さん、アデューさん、お世話になりました。
あと、もう一人の方にもそうお伝えください。」

エリーは再度一礼し、早足でその場を去ろうとした
その時
アデューがエリーの腕をつかんだ
「待った!」

エリーが驚き振り返る
咄嗟に反応してしまったアデューは、慌ててつかんでいた腕を離した
「ご、ごめん。うーん…なんて言うかなぁ〜… やっぱり女の子の一人旅は危ないよ…黙って見過ごすことはできないー…」

エリーが困ったようにうつむく

次の言葉が出てこなく押し黙る二人
その時、アデューの腹がグゥ〜と鳴った

「!!」
アデューが恥ずかしそうに腹を押さえる

エリーは少し口元を押さえ、笑みを浮かべているようだった

「はっはっはっはっはっ!昨日の夜からロクな食事をしていないからなぁ!
どうだ、一先ず朝の腹ごしらえをしないか?」

懐の袋を取り出し月心が続ける
「昨日の賞金も入ったことだ。この賞金はお主のお陰でもある、エリー殿も、共にどうだ?」

「そ、そうだよエリー!昨日の酒場で、結局何も食えなかったんだろ?」
アデューが月心の言葉に便乗し、エリーを誘う

「酒場…。!」

酒場でアデューと一回会っているのだろうか?と考えこんだエリーだったが、すぐに気が付いた
注文の仕方がわからずうろたえていたエリーの顔を覗き込んできた
茶毛の緑色の目を持つ少年…
それはまさしく、ここにいるアデューだったのだ

その事実が分かった途端、エリーは急に恥ずかしくなってしまい、アデューを直視できなくなってしまった

「さっ、そうと決まれば、レッツゴー♪」
そんなエリーの思いをよそに、アデューが元気に歩き出す

月心にも後押しされ、まだ整理が付かないまま、歩を進めるエリーだった


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情報収集を終え、部屋に戻っていたサルトビに声を掛け、
4人は昨日の酒場へと向かった

昨日の夜はまともな食事ができなかった4人だが、今日の懐事情は違う
それぞれ、思い思いの好きなものを注文していった。

エリーはというと、アデューや月心に薦められるまま、
この店のお勧めの料理を食していた

「ところでさー、エリー」
アデューが口いっぱいに食べ物を詰め込んだまま話す

「俺は世界一の騎士になるため、サルトビと月心は、技を磨いて日の出国に帰るために旅をしてるんだけど、
エリーは、なんで旅をしてるんだ?」

アデュー、月心、サルトビの目を順番に見たあと、
エリーは口の中の物を飲み込んだ後、フォークを置き、
水を一口飲み、ゆっくりと話始めた

「私…実の両親を探しているの。産まれた時から孤児院育ちで…」

「そ、そっか…」
アデューが軽い気持ちで聞いたことを少し後悔する

「てがかりはあるのか?」
サルトビがそう聞くと、エリーは胸元の水色に光るペンダントを手のひらに乗せた

「てがかりは…このペンダントだけです。これと、私の名前だけが書いてある紙を揺り籠の中に添えて、
孤児院の入り口に置かれていたそうです。私」

月心が腕を組み、熟考する
「となると…そのペンダントの持っている不思議な力の発祥がわかればもしくは…」

エリーがうなづく。
「はい。旅をしてると、なんとなくこのペンダントに導かれているような感覚になるんです。
旅を続けていればいつか両親に会える気がしているんです…」


アデュー握りこぶしを作り、急に席を立ちあがり声を上げる
「よぉ〜し!そうと決まったら、俺達もできる限り協力するぜ!エリー!」

サルトビは右手で頭を抱え込みつぶやく
「また始まった…」

「騎士道大原則ひと〜つ!騎士は、困っている者を見捨ててはならない!!」

月心もうなづき、アデューをフォローする
「うむ、エリー殿、女性がこの先一人で旅を続けていくのは危険であろう。
どうだ、しばらくは我々と共に旅をしないか?」

立ち上がったアデューと月心の視線がサルトビに注がれる
気まずそうにサルトビが片目を開けて三人を見る
「わーったよ、好きにしろ!」

「ヒャッホー!やったやったー!」
アデューはエリーの両手を取り立たせると、強引に周りだした。

エリーは急展開についていけず、まだ一緒に旅をするかどうかの返事もしていなかったが、
アデューの無邪気なダンスに釣られると、不思議と不安はなくなった


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時刻は昼過ぎといったところだろうか。

「この先は岩山が多い、今日はこの辺りの平坦なところで、野営するとしよう」
月心が提案し、皆で野営の支度をすることになった。

エリーは野生生物からの防衛のための魔法陣を張り、
サルトビとアデューは土に杭をうちつけ、そこに4匹のギャロップを繋いだ
月心は大きな石などを動かし、快適に一夜を過ごせるための準備をしていた


「一通り終わったか?それでは、拙者とアデューはこのまま設営を行う、
すまんが、サルトビとエリーは、森の中で何か食糧の調達をしてきてくれ」
「わかった」

森に向かって歩き出すエリーとサルトビ
料理に使えそうな草が生い茂る所にくると、サルトビはエリーに言った
「じゃ、俺は向こうの方へ行って食い物になりそうなやつがあるか見てくるから
エリーはここらへんにいてくれ」

「うん、気をつけてねサルトビ」

エリーはサルトビを見送ると、群生する、多種多様の草を積み始めた
「あっこの草、疲れを取るのにいいかも…」
エリーは片膝を付き、かがみながら草を取っていた
その瞬間、ももの付け根に激痛を感じる
「…!っいた!!」

痛みを襲った箇所を軽く触れると、少量の出血が確認できた

しばらくすると、目の前の景色が歪みはじめ、意識がとうのいていった
「う…あれ… なんか…目の前が…」

数匹の獲物を仕留めた後、エリーの元に戻ったサルトビはエリーがいないことに気付く

「ん…?どこへ行った」
サルトビが近くの木に登り辺りを見渡すと、草むらで倒れているエリーの姿があった

「エリー!?」
驚いてエリーの元へ駆け寄ると、サルトビはエリーを抱き起した
意識を失っているようだ

バシャッ

「ぅ…」
顔に水をかけられたエリーは意識を取り戻す
ぼやけた視界にサルトビらしき人物を確認できた

遠くにほんのかすかにサルトビの声が聞こえる
「…リー、エリー!!おい、しっかりしろ!!エリー!!!」

「…サ…サルト…」

「おいどうしたんだエリー、何があった!」
その時、草むらで何かが動く

「そこかっ!」
サルトビが咄嗟にクナイを投げると、木の幹にヘビがつきささった

「あれは…!毒蛇か!エリー、もしかしてあいつに噛まれたのか?どこだ?どこを噛まれた!!?」

「あ、足が…き、急に痛く…」

「足だな!」

サルトビはそう言うと、エリーを木に寄りかからせ、足を入念に調べた
エリーの右足の太ももの裏が、すぐ確認できるほど赤く腫れ上がっている

サルトビはすぐ毒消しを用意しようとするが、手元にないことに気付く
「くそっ薬は向こうの荷物か…!」

エリーの顔がみるみる青くなってくる、息も荒い
「取りに行ったら間に合わないか…っ こうなったら仕方ねぇ…!」

「エリー、少し痛むが、我慢してくれ」
そう言うとサルトビはマスクを外し、身をかがめて
エリーの細く、白い太ももを両手で押さえ、
そのピンク色に腫れ上がった箇所に唇を押し付けた

蛇の毒牙に刺された箇所を入念に吸い、唾とともに毒を外へ吐き出していくサルトビ

決して見ることが許されなかった、初めて見るサルトビの素顔
そして足に吸いついているサルトビの行動をまのあたりにして、
エリーは朦朧とする意識と痛みの中ではあったが、恥ずかしさも感じていた
「サ…サルトビ… ぅ…いっ!…んっ…」

「すまねぇ、痛いか?もう少し我慢しろよ…!よし、これで少しは大丈夫なはずだ…」

サルトビは一通りの毒を吸い出すと、
血で滲んだ箇所を水で入念に洗い流す

少し意識も戻り、ふらつきながらも体を起こせるようになったエリー

「エリーしっかりしろ、すぐに戻って薬を飲むぞ、ほら」

サルトビがエリーの前に背中を向けてかがむ

「だ、大丈夫…自分であるけ…」
エリーは必至に木を伝って立つが、すぐ座り込んでしまった

「そんな状態じゃ歩けねぇよ!いいから早くこいっ!」

サルトビがエリーの前に無理やり体を入れ込み、おぶらせる

懸命に走るサルトビ、エリーは朦朧とする意識の中で、サルトビの首すじから香る爽やかな匂いを感じていた
「ごめんね……サルトビ…」
精一杯声を振り絞りつぶやくと、エリーはサルトビの上で再び意識を失った

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野宿の設営場所に戻ると、月心とアデューが荷物の整理と設営を進めていた

遠くからエリーをおぶり、走ってくるサルトビの姿が見える

二人を発見したアデューは月心に話しかける
「あれ、サルトビとエリーじゃないか?どうしたんだ?」

サルトビが二人の姿を見つけ、叫ぶ
「エリーが毒蛇にやられちまった!毒消し薬を用意してくれ!!」

「なに、毒蛇だと!?薬だな!あいわかった!」
月心が急いでギャロップに積まれていた荷物から薬を取り出す

アデューの助けを借りながら、サルトビは野営の平坦なところにゆっくりエリーをおろした
「めったに見ない毒蛇だ、蛇はもう仕留めたが、その前に野草を摘んでたエリーが噛まれちまったみたいだ」

注意深く走ってはきたが、多少の震動で毒がより全身に回ったのか、
エリーの容体は先ほどよりも悪くなっていた

サルトビは、月心から手渡された毒消し薬の葉を急いで練り、
それを水に溶かし、エリーの口から注意深く入れる

余った分をエリーの足に入念に塗りこみ、清潔な布で足を丁寧に巻いていくサルトビ
「足を噛まれたでござるか」

「ああ、噛まれてからすぐに、応急処置はしたんだが…」

一通りの手当が終わり、サルトビが再び意識を失ってしまったエリーの顔色を心配そうにのぞきこむ

顔が青白くなり、呼吸も浅い、エリーの容体は決していいとは言えなかった

そんなエリーの様子を見て、耐え切れなくなったアデューがサルトビの胸倉につかみかかる
「おいサルトビ!お前が付いていながら、なんでこんなことになるんだよっ!!!」

「…っ!」
いつもはアデューを突き返すサルトビも、今回は何も言わず無言のまま目を横にそむけた

「…くそっ!」
その様子を見て、アデューもバカらしくなり、サルトビの胸倉から手をほどき突き返す

しばらく3人でエリーの見守っていたが、月心が口火を切る
「いかん、日も暮れてきたな。サルトビと拙者が、食糧調達の続きに行こう、
アデューはエリーが見える範囲で様子をみながら、薪の準備をしてくれ」

「あぁ…」

3人は無言で、それぞれの作業にとりかかった…

やがて日は暮れ、夜の気配が確実に近づいていた


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時にエリーの顔色を見、呼吸を確認しながら無言で夕飯の支度や薪の準備をする3人

近くで燃える火の暖かさを感じ、エリーがうっすらと目を開けた

「あ、エ、エリー…!」

その様子にすぐ気付いたアデューは、
エリーの元に駆け寄り、体を起こす手助けをする
「エリー、無事か!?」

「…アデュー…、ここは…」

その様子に気付き、月心もエリーの元へ近寄る
サルトビは近寄らず、遠くで見守っていた

「目を覚ましたかエリー!お主は毒蛇にやられて気を失っていたでござるよ」

痛みを感じる足に目をやると、太ももに丁寧に巻かれた包帯が見えた
「私、草を取っていたら足に激痛が走って…」

「とにかく、もう少ししたら夕飯ができる、少し食べてからまた横になるといい」

アデューの集めた薪が、大きく明るい炎を上げている
暖かい汁物の匂いがあたりにただよった

月心の介抱の元、
エリーが少しずつ夕飯を口に運ぶ
「ん…おいしい…」

「エリーの作るものに比べると、まだまだ足元にもおよばんが」
今日の夕食を担当した月心が申し訳なさそうに笑う

「そんなこと…、すごく元気になったわ。
皆、ごめんなさい、私のせいで迷惑かけて…」

「気にするな、あいつが…ちゃんと見てなかったのが悪いんだから」

アデューの視線の先には
素顔を見られないよう、いつものように仲間から背を向けて夕食を食べているサルトビの姿があった
話題に上がった瞬間、スプーンの動きが一瞬止まったように見えたが、その後も無言で食べ続けていた

「ううん、サルトビはすぐに気付いて手当してくれたの。そうじゃなかったら、今頃私…」

食事を早々に終え、食器を片づけに来たサルトビに、エリーが再び礼を言う
「サルトビ、本当にありがとう…」

「あ、あぁ…」
一番エリーの容態を心配していたサルトビがやっと重い口を開き、ぶっきらぼうに返事をした


「はぁ〜…、まぁ今回は大事に至らなくて良かったけど、こういう時、イズミの坊さんがいないと困るなぁー。
サルトビぃ、毒消しがない時の処置って、どうやるんだ?」
アデューのその質問を聞いた途端、今日の出来事を思い出したサルトビとエリーの顔が赤くなる

「… ど、どうって… 毒を絞り出したり… …吸い出したりだ!」

「毒を吸う?」

「…チッ…!飲み込まないように注意しながら、毒を口で吸いだして外に吐き出すんだよ!」

月心も初めて聞く方法のようで、さすが忍者とばかりサルトビの言葉に感心して頷く
「なるほど、だが、誤飲も考えると、簡単にできるものではなさそうだな。今日はその方法を?」

月心とアデューの目線が、エリーの太ももの包帯に向けられた後、サルトビに向けられた

サルトビが無言でアデューを睨み続ける
「サルトビ…まさかエリーの応急処置って…」

「…っ!な、なんだよ!文句あるか!」

「お、お前ぇ!口で…口であそこを吸ったのか!?」
アデューが立ち上がり、エリーの足を指し示す

「仕方ねぇだろ!緊急事態だったんだよ!!」

「そうとはいえ、口でってお前ー!なんてハレンチなやつなんだ!」

「じゃあ他にどうしろってんだよ!毒消しは手元にない、容態は悪くなるで、ほっておけねぇだろ!」
サルトビの精一杯反論する声もうらがっていた

「そうだけど〜…くぉー!ゆるせーん!!」
いつものようにアデューとサルトビの格闘が始まる

「なんだ!それくらいのことで!お前ガキかぁ!!?」

「うっるさーい!このっこのーー!!」

月心も進んで二人を止めに入ったが、いつしか溜まっている欲求を解消するように、3人は疲れて倒れるまで格闘した

エリーはしばらくその様子を見ていたが、
今日のことを思い出す度に恥ずかしくなり、
布団をかぶり、そのうちに寝てしまうのだった


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「温泉だぁ〜ヒャッホーイ♪」

「温泉とは、ひさしぶりでござるなぁ」

「おんせん…?」


「エリーは温泉って知らないかぁ?」

「温泉というのは、暖かい水みたいなものだ。火山が影響して、地下から暖かいお湯が沸くのだ。
色々な成分が溶け出しているから、それによる滋養強壮などの効能もあってな、それはその土地土地によって変わる」

「次の町にいくまで、少しなら時間がある、少しここで休むか」

「入ってる時は無防備になるから、分かれて入ろうぜ」

「エリーは一人で入るとして…、我々が3人で入る」

「でもそれじゃ、俺達が入ってる時の見張りは、エリー一人になっちまうぜ」

「そうでござるな…」

「一人ずつ入ればいいじゃないか」

「それほど時間ござらん、今日中に次の町にも着いておきたい」

「じゃ、初めてのエリーはいいとして、一人は温泉を諦めるんだな」

「二人、二人じゃだめなの?」

「「「え!?」」」

「そのっ…お互いに見ないようにすれば、私は一人じゃなくても…別に…!」

「そ、そんなっ!そんなん、だめだ!」

「じゃあお前が入るの諦めろよ!」

「なぁにー!?お前が残れよ!」

「アデュー、私なら大丈夫だから、みんなで仲良く入ろう?ね!」

「う〜…エリーがそう言うなら…」

「では、誰がエリーと入るか、どう決めるかだが…」

「私が、枝を3本集めて、その内の一本は葉っぱがついたもので、それを引いた人!っていうのは?」

「問題ねぇ、そうしよう」

「はい!」
エリーが3本の木を差し出すと、3人は思い思いの木を選んだ

アデューが音頭を取る
「イチ、ニの…サン!!!」

一斉に引き上げられた枝のおみくじ
一つだけ葉を付けた枝を選んだのは…

月心だった

「うわぁーー!」
「…チッ」
「おおおおおおお!!!」

それぞれが声を上げる

「ってことはぁ…俺はサルトビと入るのか〜!あーあ…!」

「おい、ガッカリしてるのはこっちの方だぜ!お前と入るぐらいなら、まだ入らない方がましだぜ!」

「おーお、なら俺一人で入るから、お前は絶対来るなよっ!!!」

相変わらず中の悪い二人をよそに、

「すまんが、拙者になってしまったみたいだ…、も、もちろん背を向けるが…!」


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定期便かぁ…
次の便まで、結構日数もあるなぁ。それに金もいる。。

かと言ってここら辺は比較的平和なところだから、賞金首もそうそういないしなぁ
この街には大きな闘技場もあって色々な国からつわものが集まる。
参加費を払って、負ければ没収、勝てば相手の参加費をもらえる。修行をしながら、資金をためるか


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「すみません、お店の方ですか?この本おいくらしょうかい?」

「んーどれどれ…んーっと裏に値札が…
んー…年をとると見え辛いねぇ…」

「お前さん、どうだね、ここで働かんか?
こう見えても、人を何人か雇えるくらいの稼ぎはあるんだが、なんせ老夫婦できりもりして、この有様
どうだね?考えてもらえないか?
ここの古文書屋で働けばいい」

「おばあさん、いいんですか?」

「あぁ、老夫婦じゃとても管理できなくなってな、」

「ワシとばあさんは本々冒険者でな。
少しずついろいろな土地の本を集めてきたんじゃ」


「月心!」

「これから道場に向かう途中でな。本の整理か?どれ、拙者も手伝おう」

「え、いいの?あ、ありがとう…」

「エリー、お客さんかい?」

「あ、おばあさん、いいえ、私の旅の仲間です。」

「拙者月心と申す。エリーが世話になっております。」

「あらまぁ、礼儀正しい子だね、あたしゃ礼儀正しい子が大好きだよ、
手伝ってくれてるのかい?ありがとう、男手が足りないから助かるよ。」

「一通りこの辺りは片付いたであろう。では、拙者はそろそろ。」

「月心、ありがとう。すごく助かったわ」

「お、ここか」

「サルトビ!」

「へっさっき月心とすれ違ってな、エリーが働いてる店が途中にあるって聞いたんで、来てみたんだ。
いい感じに年季が入った、なかなかいい店じゃねぇか。」

「あ、忍術の本、あったのよ。」

「ほぉ、結構いい本だな、だが、このレベルの忍術なら、全部習得済みだ。」
「だが、なかなかいい本だな、ん、これ1ゴルゴルか…」
「おいばあさん!この本なら、50ゴルゴルで売れるぜ!」

「あらぁ、またお仲間さんかい?」

「はい、日の出国の忍者で、サルトビといいます。」

「東方の書物はワシらでも価値がわからんでなぁ、そうやって値段を確認してくれると、助かるねぇ」

「どれ、じゃぁ東洋のところは一通り値段見ていってやらぁ」

「い、いいの?サルトビ…」

「あぁ、ま、今日は試合に勝って賞金も手に入れたし、結構機嫌がいいんだ。」

「勝ったの?すごいっ!」

「エリー!いーるかー?」

「あ、アデュー!」

「あら、またお仲間さんかい?」

「はい、…これで旅の仲間は全員です。」

「みんな見に来てくれたんだね。エリーちゃんは人気者だねぇ」

「へぇ〜… すごい本の数だなぁ〜
あ、サルトビ!なんでお前がいるんだよっ!」

「なんだぁ?いちゃ悪いのか?いちゃ!?」

「お前、試合はどうしたんだよ!」

「おあいにく様、瞬殺でこのとおりよ」
ジャラ…
サルトビは今日稼いだ分の金貨が詰まった袋を取り出す

「お前こそ、本なんか読まないのに何のために来たんだ?!」

「勝手に決め付けるな!」

「決めつけてねぇよ、本当のことだろ!」

「ちょ、ちょっと!二人ともお店の外でやってよー!」

「こい!音速バカ!」

「あ、こらまて!ヘボ忍者!!」

#$%&☆…

「賑やかだねぇ」

「…は…はいっ…
すみません、さわがしくて…」

「いやいや、いいんだよ、ワシらには子供がおらんから、
孫がいたら、丁度君らと同じくらいかな。
まるで店に孫たちがあそびにきたみたいで、とっても嬉しいよ」

「そうですか…」

「はい、エリーちゃん
今日手伝ってもらった分、仲間の多めに入れておいたから、お店も大分きれいになった。皆さんによろしくね」

「おばあさん…気を遣ってくださって、ありがとうございます。」




アースティアには幻の大陸と呼ばれているものがある、エルドギアやムー…

「エルドギアなら、俺達行ったことあるぜ?」

「お、お前たち、エルドギアに行ったことがあるのか?!」

「…なら、あるいは…幻のアルティナ大陸も、もしかしたら見つかるかもしれんな…」



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「月心とサルトビはなんでも食べてくれるからいいけど、アデューはタマネギが苦手だから…」
エリーはつぶやきながら、旅に必要な食糧の吟味をしていた。

食べざかりの男三人の食糧の買い出し、もうじき荷物持ちとして誰か手伝いに来る頃だった

「エリー…?」
ふと名前を呼ばれ、エリーが振り向くと、その先には驚いた様子の一人の青年が立っていた

「…ラ、ライアン…!」

エリーがライアンと呼んだその男は、髪の色は翡翠、表と裏の色が微妙に違う、濃い青色のマントを付けていた
背中にはレイピアだろうか、細い剣をさしている

「エリー!エリーじゃないか!!ここに居たのか、心配したんだぞ!どこに行ってた?
大丈夫だったか?今まで何をしていたんだ、さぁ、私と一緒に…」
青年はそう言いながらエリーにズンズン近づき、腕をつかんだ

「…ぃやっ!!!」
腕を掴まれた瞬間、エリーは咄嗟にライアンの腕を強く振り払った

驚いた顔の男は、一瞬ひるんだものの、困惑した顔で続ける
「エリー…?どうしたんだ、さぁ、また一緒に旅をしよう」
エリーにむかってゆっくり歩を進める度に、エリーは後ずさりし、ライアンとの距離を保つ

「お〜いたいた〜エリー!」
その時、荷物係として来たアデューが細道からエリーの姿を見つけやってきた

エリーは咄嗟にアデューの元へ駆け寄った
そのひどくおびえた目にアデューは不思議がる
「エリー?どうした…」

エリーの視線の先に、近寄ってくる細身の青年を見つけ、アデューは咄嗟にエリーの前に体を入れた

「なんだ、あんた!」

「ん?小僧、お前こそなんなんだ。私は君の後ろに居る彼女と話がしたいんだ。どきたまえ」

エリーは男に目を合わせられず、怯えたまま肩で息をしている

「話なら俺が聞く!俺はエリーの仲間のアデューだ!」

「仲間だと…?あれから別の仲間を作って行動してたのか?そうなのか?!エリー!!!」

ライアンの大きな声に、エリーは一瞬ビクつき、アデューの後ろで小刻みに体を震わせた

そのエリーのただならぬ雰囲気を心配し、アデューはエリーに声をかける
「エリー、あいつとは俺が話すから、先に宿に帰ってろ」

エリーはアデューの言葉に小さく頷き、アデューが来た細道を走って行った

「おい!エリー!!!逃げられないぞ!!!!」
後を追おうとするライアンを、アデューが制止する

「ここから先は行かせないぞ!騎士道大原則ひとつ!騎士は、女子供を守らねばならない!
あんた、あんなに女の子を怯えさせて、目的はなんだ!」

「はっ!騎士だと?…チッ、俺のエリーがこんなクソガキと旅をしてるなんてますます放ってはおけないな。」

一番言われて嫌な言葉を言われ、カッとなりライアンの胸ぐらにつかみかかるアデュー
「なんだとぅ!?ガキって言うなぁ!」

「ふん、話にならん」
ライアンはそう言うと、アデューの手を払い、マントを翻して反対方向へ歩き出した

「あ!こら待て!逃げるのか!!?」

アデューの声にも一度も振り返ることなく、青き魔法剣士はその場を後にした


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アデューが宿に戻ると、荷物の整理を終えた月心、サルトビと
ベッドの上でうずくまり、ひどくふさぎこんだ様子のエリーの姿があった

買い物に行っていたはずのエリーが手ぶらで町から戻っており、一言も話さない
その様子に事情もわからない月心とサルトビも、どこか気まずい様子で、対処に困っている様相だった

部屋に戻ったアデューは兜を脱ぎながらエリーに話しかけた
「エリー、あの感じ悪い奴、途中で帰っていったけど、知り合いかぁ?」

月心がエリーが落ち込んでいる解決の糸口を探ろうと、すかさずアデューの発言に反応する
「アデュー、何かあったでござるか?」

「あぁ、エリーの買い物の手伝いに行ったら、見たことない男がエリーに近づいてきて、
俺のエリーが〜とか言って、エリーを怖がらせてたんだ」

3人の男はその言葉に対する反応を見るため、エリーに視線を向ける

エリーはうつむいたままだったが、唇を強くかみしめ、体をワナワナと震わせていた

そのただ事ではない雰囲気に事情をくみ取り、話題を変えようとサルトビが声を発する
「ま、何にせよこの町は物騒だってことさ、エリーが外に出る時は、必ず俺たちのだれか一人が付けばいい」

「うむ、そうでござるな」
月心も重い空気を気遣い、アデューとエリーの話を終わらせようとしていたその時、
エリーが小さく途切れの声で話し始めた

「アデュー、さっきは…。ありがとう。
あの人は…。ライアンっていって。私が。前。一緒に旅をしていた人なの…」
そういうとエリーは泣き出し、嗚咽をうち始めた
月心がそばに行き、エリーに話しかける

「エリー、話したくないことは、無理に話すことはござらん」

「うっ…月心…っっうっ…ううん、いいの…みっ…みんなに…んうっ…話しておきたいから…っ」

サルトビも遠くから声をかける。
「そうだとしても、そんなに焦ることはない。もう少し落ち着いてからでも遅くないさ」

「エリー、少し眠れ、買い出しの事は心配しなくていい、このままではお主がまいってしまうぞ」
しゃくりあげながら泣きじゃくってるエリーに、月心は毛布をかけ横にさせた

エリーはしばらく顔が見えないように背を向け泣いていた
小さい子を寝かしつけるように、月心が眠りにつくまでそばにいて5つ年下のエリーの髪を撫でていると、
その内に寝息を立て始めた


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夜、宿やの一室の窓が曇る

暖かい飲み物と軽い食事を用意し、仲間はエリーが話し始めるタイミングを待っていた
エリーは十分に睡眠を取ったからか、暖かい食事のお蔭か、黙って見守る仲間たちのお蔭か、
少し落ち着きを取り戻していたようだった

「色々心配をかけてごめんなさい。今から話す事は、皆と会う前の話なんだけど…皆には話しておきたくて」

「あぁ、俺たちは仲間だ、なんでも話せよ!」
アデューが真剣な目でエリーを見る

その目に答え、エリーもアデューの目を見て軽くうなづいた

エリーが小さく息を付き、少しずつ話始める
「私は…旅を始めてから皆に会うまで、ずっと一人で旅をしてきた訳じゃなくて、
私にも何回か仲間が居た時があったの。
旅人が集まるところで仲間を探して、4,5人のパーティが居るところに入れてもらったり。」

酒場で食事やら酒やらおぼってもらって、酒によって、宿屋につれこまれて襲われそうに、
逃げていた時に手を引っ張り、「こっちだ!」といって助けてくれたのがライアン


「でも、しばらく旅を続けると…仲間の何人かが、ひと気のないところとか暗いところに入ると、襲ってくるようになった…」

「その度に、魔法を使ってなんとか逃げて、また一人になって…」


そんな中出会ったのが、ライアンだった
ライアンは魔法剣士で、魔法が使える私の気持ちをわかってくれたから、すぐ意気投合して、
すごく親切で…優しくて…、心から信頼していた
でも…
ある日の夕方、森の中を歩いていた時急に…


「エリー…!!」
「ラ、ライアンどうしたの痛いよ」

「エリー、もう我慢できないんだ!いいだろ、エリー、な?」
「ラ、ライアン…?急にどうしたの、痛いよ…離して?」

ライアンは体に痣ができそうなほどの強い力で、後ろからエリーのことを締め続け、その服を剥いでいった
「いや!いや!!ライアン…!お願い、やめて!!!」


「エリー、大人しくしてろ! あまり乱暴なことはしたくない」
「なんでっ…なんでぇ…!!!」

「やめてライアン!やめて!!離してぇっっ!!!」
その瞬間白く輝く大きな光がエリーのペンダントから放たれた
「うわぁああ!」

「エリーまて!くそっ目が見えない!!!」

エリーは全力で森の中を駆け抜けた
ひとしきり走り終わり、ライアンが追いかけてこないことを確認すると、
膝から崩れおち、声をひそめて号泣した
「ライアン…ライアンだけは違うと思ってたのに…なんで…なんでいつも…なんでっっ…!!」


「それ以来もう誰かと旅をするのが怖くなって…それからは目立たない格好をして、ずっと一人で旅をしてきたの…」

「それであんな黒装束を…」
エリーはサルトビを見て、困った顔で小さくうなづく

月心が気を遣いながら尋ねる
「でもなぜ、また我々と共に旅をしてみようと思ったのでござるか?」

「うーん… アデューかな!」

「俺ぇ?」
アデューがキョトンとしながら自分を指さす

「ふふっ、うん、アデューに会った時、騎士だって言って、追い掛けてきて必死に守ってくれようとした時、
不思議と、もう一度人を信じてみようって気持ちになったの。何故だかわからないけど、本当に自然に…」

「そ、そうだったのか、大丈夫、俺は、絶対エリーを悲しませるようなことはしない!
これからもずっとエリーを守る!その気持ちはずっとずっと変わらないから!!」

歯の浮くようなセリフを気にすることもなく口から発するアデューに、
エリーは恥ずかしそうに応えた
「アデュー…。サルトビ、月心、みんなありがとう…」


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ライアン、お店の人に迷惑だから…もう…こないで…

エリー、もう一度、もう一度君と旅をしたい、お願いだ、私を許してくれ、この通りだ!

やめて、ライアン!
私は今、違う仲間達と旅をしているの、だからもう一緒には行かない。





またお前か!エリー!
こんなガキと一緒に旅をするなんて、何か起きてからじゃ遅いんだ、
私が、エリーを守るから、こんな奴はほおっておいて、一緒に来い!

なんだと!ガキじゃねぇ!オレは騎士だ!俺がエリーを守るから




アデュー!

ライアン、もうやめて!いう通りにするから!

アデュー!アデュー!!

じっと…エリーを見た
自分の中で何かを決心し、エリーにそれを言いかけたが、
思い直したようにアデューはその言葉を飲み込んだ


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街の隅の小高い丘にアデューの姿を見つけた
近寄ってみると、そこは街が一望できる場所だった

「アデュー…」
エリーが後ろから小さく声をかける


長く鼻から息を吐く、
アデューの張り詰めていた顔が、エリーを見つけることによって少しほぐれたように感じた
「エリー…、そろそろ夕食か?」


「うん、ここに居たんだね」
エリーが両腕を伸ばし、前に組みながらアデューに近づき、
アデューと同じ方向に体を向け街を見下ろす
吹いてくる風をめ一杯吸い込んで
ゆっくり息をはいた

「いい場所だよな、高い所に来ると周りが見渡せて、心が落ち着くんだ。」
アデューが言う
エリーが小さく頷き、顔を前に向けたまま目を伏せて続ける

「明日…決勝戦だね…」

アデューの顔が引き締まる
「あぁ…!
絶対勝って、ずっと夢だった、世界一の騎士になるんだ…!」

「うんっアデューなら大丈夫。絶対勝てるって、信じてる」
エリーが顔をすこし傾け、隣のアデューの顔を見る

「絶対勝って…そしたら…」
アデューは自分にしか聞こえない位の小さな声でつぶやいた後、
両手に握りこぶしを作り、空に向かっていっぱいに背伸びをした。

「ぃよぉ〜ぅし!そーと決まれば、腹ごしらえだぁ〜!」
そう言うやいなや、アデューはエリーの手を握り丘を下りだした

「ちょっ…ちょっとアデュー!!」
バランスを崩さないように必死についていくエリー

いつもアデューは私に背中を向けて走っていってしまうけど、
今日は一緒に走ってる
明日はアデューと一緒に戦ってる気持ちで応援しようと、
エリーはそう、心に誓った


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いよいよアースティア一の騎士を決めるという名目の
バルド王国主催の大会が幕を開けた。

予選、本選と持ち前のバイタリティと柔軟性、そして運のよさを活かし、
ギリギリのところで勝ち上がっていくアデュー

そのアデューに熱い視線を送る人物がいた。
この国、バルド王国の王女、ローザ姫だ。
双眼鏡を傾け、熱心にアデューの様子を見ていた

最終戦の対戦カードは、この国の名誉をかけて勝たなければならない、
最強と言われるバルド王国騎士団を率いる、25歳の若き騎士団長、ジーク
対するは、伝説のリューの中でも最上級クラスのリューナイトを乗りこなし、
邪竜族との戦い打ち勝ち、アースティアを救った…
とは誰も知る由もない、
17歳のリューパラディンロードゼファーの乗り手、アデュー・ウォルサム

もちろん、この世界一の騎士を決める戦いでは、
ソリッドやリューは登場しない。
己の身と、愛用の剣一つで、相手に「参った」を言わせるか、
審判に試合を中断され、勝ちを言い渡された方が勝ちだ

世界一の騎士を決める、記念すべき第一回目の大会
勝てば多額の賞金。
赤の少年対、最強の国の騎士団長
コロシアム全体が息を呑む…

「始め!」
審判の合図を皮切りに、ジークとアデューの世界一の騎士の称号をかけた戦いが始まった

先に動き出したのはアデュー
まずはお互いの力を見極めるように、剣での切り返しが繰り広げられていく
その余りの激しさに剣先から飛び散る火花
年齢、体格共にジークの方が上、スピードはアデューの方が早かったが、
力ではやや劣っているように見えた

次第に切り返しでアデューは押され気味になり、空をかすめたジークの剣が
アデューの残像を切る

アデューは焦っていた
ゼファーはいない、信じるのは己の剣技のみ

ジークはアデューよりも長い年月培った剣技を
惜しげもなく披露していった
左右に振られ、力を込めた渾身の攻撃も受け流されるアデュー

「くそっ…強い…!
力も経験も相手の方が俺より上だ。
どうする、どうやったら勝てる!?考えろ…考えろアデュー…!」

アデューが焦っている間にも、ジークは攻撃の手を休めない。
それにも関わらず、全く体力は消耗していない様子にさえ見えた
次第にアデューはジークの攻撃を受けるだけで精一杯な体制になっていった

息が上がり、足元がおぼつかなくなったアデューは遂に片ひざを付く
肺からは表現のしようがない呼吸音がしていた
会場の誰もが、アデューの負けを確信しだしていた

「君がなぜ決勝戦に勝ちあがれたか不思議だ…」
ジークが剣先をアデューに向けたまま近づく

アデューは頭を垂れ、小刻みに体を震わせていた
「…に…世界一に…」

「降参しろ!」
ジークはアデューに一声かけると、大きく剣を振り上げ、勢い良く落とした。

「俺は…俺は…絶対にぃ…!」
審判が試合を止め、勝者を決定付けようとしたその時、

「世界一の騎士になるんだぁーーー!!!
うおおおおおおーーーー!!!」
寸ででジークの剣を下で受け、渾身の力で押し返すアデュー
そのまま立ち上がり、猛烈な切り返しをジークへ浴びせた

「な…こいつどこにそんな力が…!」
ジークがアデューの剣を受けながら、堪らず後ずさりをする

もう一度距離をとり、剣を構え直す両者
アデューは気力だけで立っており、肩で激しく息をしていた

アデューの力も体力ももう限界を超えていた

ジークは少し驚きひるんだ様子だったが、再び気を集中させアデューに振りかかっていった


「力も技もあんたには負けてる…だけど俺は!速さじゃ誰にも負けないっ!!
俺は!音速の!!アデューだぁーーー!!!」

叫びながら真っ向からジークに向かっていくアデュー
両者の剣が交わろうとしたその瞬間、アデューの姿が消えた

「なにぃっ!!!」

ジークがアデューの気配を感じる時には既に
ジークの背後のアデューは、その首筋に
剣先を据えていた

なんとも言えない嫌な汗がジークの体中から噴き出す
会場に一瞬の静寂が走る

ハッとしたように審判が声を発する
「し…勝負、あり!
勝者、アデュー・ウォルサム!」

『ワァアアア!!!』
予期せぬ展開に、会場に悲鳴に近いどよめきが走った

ショックの余りその場に剣を立て、ひざまづくジーク

「や…やったぁ…」
ヘトヘトになったアデューもその場に崩れ落ちる


会場で息を呑んで試合の行く末を見守っていた、
エリー、サルトビ、月心もまた胸からあふれ出る思いを感じていた

「良かった…良かった本当に…
おめでとうアデュー…おめでとう…!」
エリーは止めどなく溢れる涙を拭うことなく、
世界一の騎士に対しておしげもない拍手を送り続けた


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当日の表彰式、賞金の授与を終えた翌日、
4人は再びある招待を受け、バルド王国の城へと向かっていた。

世界一の騎士が街を歩くと、黄色い声が飛んだ
「きゃ〜!騎士様〜!!☆☆☆」
騒ぎを聞きつけた街の女の子達が至る所に増殖していた

アデューはまんざらでもなさそうに、恥ずかしがりながらヘラヘラと手を上げる
エリーはパーティの中で唯一の女性ということもあり、
街娘達の嫉妬の視線をチクチク感じていた

サルトビと月心はというと、
ただでさえお調子者のアデューがチヤホヤされて有頂天になっている事に
やはりあまりいい気持ちはしてないようだ。


ただの優勝者にしては異例の晩餐会。
アデューのみならず、共に旅を支えてきたということで、仲間も招待された

入口の門番に挨拶をすると、城へのずっしりとした城門が開かれ、
待っていた近衛兵に案内されるままに、場内に歩を踏み入れた4人
王族の前の席ということで、4人は衣装の着替えを進められたが、忍者・侍であるサルトビと月心は断った
主賓であるアデューは断ることができず、剣やミストロット(これとは明かしていないのだが)といった貴重品の所持は、
特別に許された。
エリーは特別断る理由もなく、晩餐会に出席する女性が少ないことから
場を華やかにする意味でも否応なく服装を変えることになった。

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夜、王宮の庭に灯がともり、幻想的な風景を作り出した
庭に置かれた楕円形の長く、白い大理石のテーブルの上に、従者が次々と料理を運ぶ
美しい金銀の装飾がほどこされた皿にはつや出しのタレを塗られ、程よく焼かれた肉や
今まで食べたこともないようなみずみずしいフルーツの数々
銀製のよく磨かれたスプーン、フォークが何本も並べられているが、
それら全てを使いこなしても到底食べ切れないほどの量だった。
先に庭に通されていたサルトビと月心はいち早く食べたい衝動に駆られていたが、
主賓が来るまでは、他の王族ゆかりの招待客と共に待たされる羽目になっていた

しばらくすると、宮殿内からどよめきが聞こえた。
やっと王族が来たかと二人が目をやると、そこにはこの国の騎士団長ジークに手を取られて
庭へ向かって歩いてくるエリーの姿があった
エリーは、おそらく本物の姫以上の美しさに見えた
緩いウェーブのかかったブロンドの髪を左に寄せて肩から降ろし、
頭には小ぶりだが上品な形のティアラが飾られていた
首にかかるネックレスはエリーのものであるが、その透きとおる青色により、
まったく違和感がなく、人物の清潔さをより際立たせていた
濃いピンク色と淡いピンク色がセンス良く使われているドレスは少し肩の出るスタイルで、
光沢のある細い肩がみえかくれするのもまた魅力的であった
腕にはシルクの長いグローブをはめており、手首にはレースの装飾が施されている
腰にある縦ラインの縫製が、エリーのウエストをより細く見せる手伝いをしていた

実は晩餐会の場へと向かうジークが、偶然従者と共に歩くエリーを見つけ、
自らエスコートを申し出たのであった
幾度となく女性のエスコートをこなしてきたであろうジークの顔ですら赤い
おそらくエリーがかなり気になる存在になっているに違いなかった

そしていつも一緒に過ごしてきた仲間を見つめる、サルトビ、月心もまた、
赤い顔で口が開いたまま吐息をこぼし、それをただただ見つめていた。

ジークがエスコートを終え、エリーのグローブの甲にキスをした
それが終わると、エリーが二人を見つけ、うつむきながら早足で歩み寄った。
両手を口の脇に添え、ひそひそと二人に語る
「緊張した…!こんな格好したの初めてだから…」

月心はジッとエリーを見つめている
その本音がつい、口から漏れてしまった
「きれいだ…」

「もう!」
エリーは月心の胴を軽くたたくと、サルトビの後ろに隠れた

エリーが移動すると、品の良い香水の匂いがした
平静を装っていたサルトビだったが、すっかり色ボケし直立不動状態になってしまい、
まともにエリーの顔すら見れずにいた

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そうこうしている内に、庭のラッパ隊が支度を終えた王族の到着を知らせる

王、王妃が威厳をふりまきながら、貫禄たっぷりに登場する。

座卓の中心へ並ぶと、王は胸から響く大きな声で、来賓者達を歓迎した
「今日は急な申し出であったにも関わらず、私達の招待を快く受けていただき、大変光栄に思っている。
まずは今日の参加者達にお礼を言いたい。ありがとう!
さぁ、話はこの位にして、早速今日の主賓に登場してもらうとしよう
主賓は言うまでもない、我が国が世界で初めて開催した世界一の騎士を決める戦いで、我が国自慢の騎士団長、ジークをも倒し、
見事勝利を勝ち取ったアースティア一の騎士、
アデュー・ウォルサム!!」

王が右手を前方に高々と掲げると、王宮から庭への扉が開き、
そこにはアデューとバルド王国の若き王女の姿があった
アデューは白い布に金の刺繍が入った、聖騎士を思わせる装束に身を包んでおり、
まだ年は届かないが、その風格は若き日のラーサを思わせるほどだった

アデューの左には、王、王妃と同じ柄の由緒ある衣装を纏ったこれはまた美しい王女が佇んでおり、
その右手は胸が当たるのではないかと思うほど、アデューの左上腕に深く絡んでいた

その二人の堂々たる姿に、招待客全て歓声を上げ、
拍手をしながら二人を庭へと招き入れる

その瞬間、その空間にはそれぞれの感情が渦巻いていた

王、王妃は顔を見合わせ満足気な様子
ジークは少し腑に落ちないような複雑な顔
月心はお似合いのカップルに両手を上に挙げ大喝采
サルトビは顎に指を置き、馬子にも衣装だなぁと感心したような顔
エリーはその神々しい二人に、ただただ高揚していた
あそこに居るのは、いつも旅をしふざけ合っているあのアデューなのだけれども、
まるで別人を見ているような
3人はそんな不思議な感覚にも包まれていた


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晩餐会はそれはそれは素晴らしいものだった
それぞれに煌びやかな招待客、沢山の美味しい食事、旨い酒、手厚いもてなし

サルトビはこんな上手い話…と不審に思いながらも、その豪華な食事達に舌鼓を打っていた

アデューは王と王女の間の席に促され、盛大なもてなしをうけている
「さぁアデュー殿、今日は遠慮なく、沢山食べてくだされよ!」
「お父様の言う通りですわ、戦いの後は、沢山食べて力を付けていただけなくては」とにっこり王女がほほ笑む
「あぁ、ありがとう、本当、おいしいねこの国の食事!」
少し遠慮げではあるが、相変わらずの勢いでアデューが料理をたいらげていく

こういった場のマナーを知らないアデューに対する仲間達の恥ずかしい表情とは打って変わって、
王族達の対応は寛容なものだった

「君は若き日のワシによく似ておる!」
王が大きくて厚い手をアデューの肩にまわし、ガハハと王が笑う

「アデュー様、ソースがお口についてますわ」
王女が白いハンカチでアデューの口を拭う
「あれ、ほんと?サンキュー!」

王女とアデューの距離が近い。

その二人に対面するように、食事を楽しんでいたエリーにジークが話しかけた
「エリー殿、楽しんでおられますか」

「ジーク様。えぇ、今日は本当にお招きいただいて光栄です。料理もお酒も美味しくて、幸せな気分です」
ほろ酔いのエリーがニコニコ笑いながら答える

「それはよかった。見てください、ローザ王女はアデュー殿にご熱心だ。
公ではありませんが、私はこれでもローザ王女の許婚という立場なのだけどもね。
私の前で見せつけられては、困ったものです。」
ジークがハハッと眉を下げて笑う

「ジーク様は、ローザ王女の許婚なのですか?」

「…えぇ、この国は代々女性が王位を継ぎ、その王女と結婚した者が次期国王となります。
その際、強い国であり続けるため、騎士団長として長く務めたものが王女の許婚になるのが慣習なのです」
言い終わると、若き騎士団長はグラスの酒を飲みほした

「さぁ、景気付けだ!エリー殿、私と踊っていただけませんか?」
スッと慣れた手つきでジークはエリーの手を取り、
長いグローブを脱がすとチュっと手の甲にキスをした
アデューに入れ込んでいる、ローザ王女へのあてつけだろうか

エリーはこういった場の踊りなど踊ったこともなかったが、
ジークがエリーの腰に手を回し、上手にエスコートをしていく
エリーの体も自然と動き、まるで初めてではないような動きを繰り広げていた

招待客から沸き起こるどよめきと歓声
それもそのはず、騎士団長のジークが手をとり踊っているのは、いつものローザ王女ではなく、
それと同等かそれより美しい主賓の連れの娘であったのだから

曲が終わり、高揚した気分のまま、エリーとジークは席に戻る

いつまでもエリーの顔を見つめたまま、手を離さないジークにしびれを切らし仲間が反応しかけたその時、
王が突如声を上げた



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「皆の者、少し聞いてほしい」

華やかな場の空気が、一瞬でピリっと引き締まる。

「この度の戦いは、実に有意義なるものであった。アデュー・ウォルサムという、
騎士道精神をもった、すばらしい若者と出会うことができたからだ」

人にそれほど褒められたことがないアデューは、
目をパチクリさせて顔を赤らめていた。
ローザ王女は、そんなアデューの左ももに手を置いている

「アデュー、君の旅の目的は、世界一の騎士になることだったと聞いた。
そして夢は、この国で叶った。」

招待客全員が、頷き、王の言葉に耳を傾けている。
「そこでどうだろう。君さえよければ、この国の騎士団に所属してもらい、ゆくゆくは騎士団長となり、
我が国を未来永劫守っていってはくれないだろうか」

「なっ…」
サルトビ、月心が驚く

周りの招待客は、現騎士団長であるジークを気遣いながら、王のその言葉に拍手を送る
王、王妃、ローザ王女はニッコリとアデューにほほえみ
現騎士団長であるジーク、エリーの鼓動は動揺から激しく脈を打っていた

当のアデューはというと、
酔っているのか考えていないのか、
いや〜そんな〜とまんざらでもないような感じで頭を掻いている

「なるべく早い返事を待っている、期待してるよ」

王はそう言うと、アデューの背中をバンッと叩き高笑いをした
「さぁ、宴もたけなわだ。そろそろ晩餐会を仕舞にしよう」

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衣装替えに導かれるアデュー、エリー

サルトビと月心は城門の前で、しばらく二人を待つことにした

「ケッ、あの音速バカが騎士団長だって?!」
サルトビが片ひざを立て、城門によりかかりながら腕を組み城を睨みつけながら言う

「うむ… しかし、かの王女もアデューのことを相当気に入ってたようだしな…
王の言う通り、もはや我らと旅を共にする必要もアデューにはなかろう」
悪態をつくサルトビを、月心が冷静にいさめるが
もちろん、月心にも思うところはあった

「ふむ…二人の着替えにはしばらくの時間がかかりそうだな、先に宿に帰るとするか。
拙者、門番に言付けをしてくるでござる」

「ああ、頼む」
(やっぱりあの手厚いもてなしには裏があったんだ。
参加するんじゃなかったぜ…)

サルトビも月心もそれぞれの複雑な思いを胸に、
口数少なく宿に帰っていった


城に泊まれという王の誘いを断り、
先に帰った二人の言付けを聞いたアデューは城門でエリーを待っていた


エリーの方も、宿まで送るというジークの誘いを断り、
足早に城を後にしようとしていた
(すっかり遅くなっちゃった、みんな、待ってるかな…)

城門で待つ、アデューの姿を発見したエリー
見慣れた赤いマントに赤い兜…
駆け寄ろうとしたが、いつもとは違うアデューの出で立ちに、思いとどまった

掌に置かれた世界一の騎士の称号である勲章を見つめ、ギュっと手の内に握る
何かを考えているように見えた

ゆっくり近づき、エリーが明るく呼びかける
「アデュー、おまたせ!みんなは…?」

「ん?あぁ、先に戻ってるってさ!」
慌ててアデューが勲章をしまいながら応える

「晩餐会…たのしかったね…」

「あぁ…!」

それ以上は何も話せず、二人は言葉少なに城門を後にした



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上手く眠れない…

優しい夜風が吹く小高い丘、眼下にはイベントに湧く賑やかな街
アデューが決勝戦の前に心を落ち着かせるために来ていた場所
そこにエリーの姿があった

丘の斜面の草むらに腰を下ろし、
膝を抱え、ぼーっと光の滲む街を眺めていた

世界一の騎士という称号を得、すっかり英雄となり、街の娘、王女からも一目置かれるようになったアデュー
この国に残り、地位も名誉も富も未来永劫保障される騎士団長となるのか、
はたまたその地位を蹴ってでも仲間と共に、目的を失った旅を続けるのか

エリーの脳裏には、酒場で注文の仕方が分からずまごついていた、エリーの顔を覗き込むアデューのあどけない顔が
何度も何度もフラッシュバックされていた

エリーの中でアデューがいない旅はもはや考えられなかったが、
それでも何かを深く考えていたアデューの横顔が気にかかる

どれくらいの時間、少年だった彼と一緒に旅をしてきただろう
アデューは騎士団長と王女が許婚になる話を知っているのだろうか、
このまま離れることになっても自分の中に後悔の念は残らないだろうか、
賑やかさを喪失した旅はどのような具合になるのだろうか…

考えがまとまらないまま、不安はグチャグチャとエリーの頭の中を回ってる

心が締め付けられて…苦しくて、辛い
こんなにまで…こんなにまでも自分の中でアデューの存在は大きくなっていた…
離れたくない、一緒に居たい、このまま旅の仲間として終わりたくない
私、アデューのことが…アデューのことが…


その空間を壊さないように、その外見とは似つかないくらい静かに、大柄な男が後ろから声をかけた
「アデューの事を、考えておるのか…?」

エリーが声の主を見つける
「月心…」

「少し寒くなってきたな…」
月心は遠慮がちにエリーの隣に腰をおろし、あぐらをかいた後、大きく鼻から息を吸い込んではいた
しばらくの間、夜風が二人のほほ、髪の表面を、優しくなでてゆく


「もし…アデューがこの国に残ることになっても、我らが旅を続けることは変わりないだろう。
いつかは拙者とサルトビも日の出国に帰らなければならぬのだからな」

少し覚悟を決めたように、真面目な顔つきで目を逸らしたまま月心が言う
「エリーも…我らと共に、日の出国に来てみないか?」

せきを切ったように月心が話しを続ける
「もし気にいれば、そのままずっと居ればいい。
拙者の家でよければ…、ずっと共に暮らしてもいい、
道場を再開して門下生を集えば、安定して飯だって食える。
海あり山あり、そうだ、日の出国の飯は驚くほどうまくてな…」

エリーは月心が全てを言い終わる前にくすっと笑った。

少しふてくされた不思議そうな顔で月心が言う
「せ、拙者、何か可笑しいか?」

「ううん…
色々気を遣ってくれて、ありがとう、月心」

エリーはそう言うと、またさみしそうに遠くを見る。
月心の想いをもってしても、アデューを失うという辛さに置かれている
エリーの心を取り戻すことはできなかった

「風邪を、引かぬようにな…」
しばらく同じ空間をすごした後、エリーを気遣いながら、月心はそっとその場を後にした


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「伝えたい事がある、サルトビと月心に言う前に、エリーに言っておきたくて。
夕方に、あの丘で待ってるから」
アデューはそう言うと、エリー背を向け足早に去って行った。

初めて会った時から、もうどのくらいの月日が経ったのだろう
その後ろ姿といえば、もう昔のようながむしゃらだった少年らしさはなく、
世界一の騎士という称号を手に入れた、自信に満ち溢れた、たくましい体つきの青年のように見えた
何かを決意したアデューの表情
それはきっと、旅の終わりを意味するもの。仲間との別れを意味するもの。

そこに行ったら、もうアデューに触れられない
それを聞いた途端、アデューが遠いところに行ってしまうような、えも言われない感覚に
エリーの全身は感覚を失い痺れていた



夕刻
影が一番長く伸びる頃
立ち止まった影に、小さい歩幅でゆっくり近づくもう一つの影

後ろから見るアデューはまっすぐ前を見つめ、
背筋を伸ばして立っている
何の迷いも感じられないといういでたちだった

足音を感じ、思っていたよりも早い動作でアデューが体をこちらに向けた
お互いの視線が合い、一陣の風が通る

片手を短刀の上に置き、もう片方の手は握りこぶしを作っている
決意が表れているきりっとした眉、緑色のその目はじっとエリーの目を見据え、口はしっかりつぐんでいる


戦いの時ですら見せないような、初めてみるアデューの表情だった

エリーは、これから始まる話が、ただの冗談めいた話ではないことを、目の前の青年のその様相から感じ取っていた。

これからアデューの口から放たれる言葉を
エリーは聞きたくなかった。
現実に直面できずにいて、この赤くて暖かい情緒的な世界がずっと続けばいいと願っていた


アデューが一歩、二歩とエリーに近づく
「エリー、これからの話だけど…」
エリーの願いもむなしく、アデューが話を始める

「俺の旅の目的は果たせた。ずっと目標にしていた、世界一の騎士にもなれた。
国王からの騎士団長の話も、とても光栄に思ってる」

話の内容のおおよその検討をつけていたエリーは
半分放心状態で、アデューの声がうまく耳に入ってこなかった

「でも、皆の旅は終わっていない、エリーの親も、見つかっていない
それに、俺がここまで来れたのも皆のお陰だと感謝している」

「うん…」
エリーが出ない声を胸の奥から絞り出す


「だから俺も、皆の旅が終わるまで、これからも一緒に旅を続けようと思う」

「それで…皆の旅が終わったら…いや、終わっても…
……
エリーとは…」

アデューの唇が、緊張で少し震えているようだった。
世界一の騎士を決める大舞台で、堂々と戦った男は
目の前に立ちすくむ女の子の前で、緊張していた

「しっかりしろアデュー…世界一の騎士になったら伝えるって決めてたんだろ…!」

アデューが小声で呟き、呼吸を整え、フッと短く息をはく
「エリー、ずっと…エリーが好きだった。
これからもずっと。一生俺のそばにいてくれないか」

別れの言葉ではないんだという安堵と、アデューから放たれた予想もしなかった言葉への戸惑いに
エリーの顔はゆがみ、感情を感じるより先に目からは熱い涙が幾重にもこぼれた

その瞬間、アデューのたくましい両腕がエリーを強く包み込んだ

ずっとというのはどういう意味なのか、アデューをこれほどまでに近くに感じるのも初めての体験で、
頭が混乱して何も考えられなかったが、
ただこれからもアデューといられるという嬉しさ、それだけで
エリーの涙は止まらなかった

エリーが落ち着きを取り戻すまで、
アデューは固く、エリーを抱き止めた。
アデューの早く力強い鼓動が心地よかった。

眠れなかった…
アデューのいない旅…
アデューのいない日常…
アデューのいない毎日…
想像すればするほど、心が苦しくなって、しめつけられて、息ができなくて、涙がこぼれて…
エリーは自分の中でのアデューの存在の大きさに、失う時になって初めて気付いてしまった

どれくらいの時間が過ぎただろうか
アデューに抱きしめられ、胸に顔をうずめたままエリーが小さな声でつぶやく
「私も、ずっと…ずっとアデューと居たい…アデューが好きなの…」

少しほっとした表情でアデューが応える
「あぁ…エリーはずっと俺が守るから」
アデューはゆっくり腕をほどき、両脇からまっすぐ降ろされているエリーの腕をつかみ、
躊躇しながら、エリーのおでこに軽くキスをした
照れるように右ほほを掻き、目をそらすアデュー
エリーも恥ずかしさのあまり、しばらく顔を上げることができなかった

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にぎわう街の大衆酒場
サルトビと月心は、「後から行く」と言っていたアデューの到着を待っていた
「少し遅れる」と伝えたエリーもなかなか来ない

サルトビは何も言わず単調なペースで食事をし(サルトビはお酒を飲まない主義 ブラボー砦より)
月心は物憂げに座っていたエリーを心配しているのか、どこか落ち着かない様子だった

来客を告げる正面ドアのベルが鳴る
もう何回目だろうか、待ち人二人が目をやると、そこにはアデューとエリーの姿があった

「アデュー!こっちだ」
月心が手を上げ、居場所を知らせる

早足で近づいてきた二人を見て、
サルトビがエリーの赤みを帯びた目に気付く
「エリー、その目…」

「何かあったでござるか」
すかさず月心もエリーを気遣う

明るく笑って、エリーがごまかす
「違うの、これは…」


ジャラ…
エリーの言葉をさえぎるように、アデューが金貨の入った袋を月心の前に置く。

「これは…? アデューの優勝賞金でござるか?」

「これからの旅に必要だろ。優勝できたのも、皆のお陰だしな!」
アデューが鼻を掻きながら言う

サルトビが両腕を組み、アデューをひと睨みして言う
「騎士団長さまは今後も安泰だから、残った俺達の旅の資金を差し入れってことか
ありがたいこって」

アデューがムッとした顔でサルトビを見下ろす
「だれが騎士団長だって?」

サルトビはすかさず立ち上がって人差し指をアデューの胸に突き付けながら詰め寄る
「なんだよ、お前はこの国に残って騎士団長になるんだろ」

「この国には残らない。俺は、みんなと一緒に旅を続ける。」
アデューはサルトビを押し返しながら言った

予期せぬ言葉に、サルトビも月心も目を丸くする
「アデュー、まことか!?」

「あぁ!騎士道大原則ひと〜つ!騎士は、常に自分自身を鍛えなければならない!
まだまだ強くなりたいし、俺がしてもらったように、皆の旅も支えていきたい」
アデューがお決まりのセリフをお決まりの得意顔でキメる

「まじかよ、お前、こんなおいしい話を蹴るっていうのか?どうかしてるぜ。
なんなら俺が代わりに、その騎士団長とやらをやらせてもらいたいね!」

「お前は忍者だろ!騎士団長が務まるかよっ」

「騎士より忍者が強いんだってことを証明してやるよ!」

「なにをぅ〜!」

「なんだよ!本当のこと言われて、悔しいか!」

いつものケンカ、いつものように月心が場をいさめる
「やめなされ、アデュー!騎士道はどうした!」

「ぐぬぬ…」

おとなしくなったアデューにサルトビが毒を吐き続ける
「ま、騎士団の奴らもこんな音速バカに騎士団長になられたんじゃ、たまったもんじゃねぇよな」

「くぉ〜のぉ〜!!言わせておけば〜〜!!!」

我慢の限界で掴みかかるアデューに、器用によけるサルトビ
「お、騎士団長さま、動きが遅いんじゃないですかい」
どこか嬉しそうに逃げるサルトビを追うようにして、そのまま二人は騒がしく店の外に出ていってしまった

いつものように取り残されるエリーと月心
エリーの顔は昨日月心が見たものとは比べものにならないほど
血色良く赤らみ、いきいきとしていた
ほっとする月心
また、何も変わらない旅が続くのだ。

景気づけに、月心は追加の酒を頼んだ



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魚狩途中のスコールによる洞窟でのアデューとのキス

思い出して恥ずかしくなり、アデューを避けるように


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エリーとアデューが王国を見つける前告白後
バイトで長期滞在してた街
休暇、メンバーは思い思いの行動
アデューはエリーを湖に誘う
水着で水をかけあったり、泳いだり
アデューは海の男に育てられたので、泳ぎが上手い

小さい滝の裏を発見
アデューとのデート
足を滑らせて小さな滝つぼに入りそうになるエリー

「きゃあっ!」
アデューが咄嗟にエリーの腕をつかみ、滝つぼに落ちないように自分に引き寄せる

気が付けばアデューに軽く抱かれるような体制になったエリー
「あ…ありがとう、アデュー」

エリーはその体勢にドキドキしながらも、顔を上げアデューを見ると、
アデューも同じように緊張した面持ちだった。

エリーの両手は丁度アデューの胸に置かれる形になっていて、
意識せずとも、アデューの早い鼓動を容易に感じ取っていた

数秒、じっと見つめあう二人
アデューがあからさまに生唾を飲む

アデューが強張った顔のまま、不器用に体ごとエリーに近づける
じょじょにエリーの顔に近づいてくるアデューの顔…
エリーもまさかと思い、緊張して固まってしまったが、
その内に肩を震わせ、笑い出した
「…くすくすくすっ…」

「な、なんで笑う?」
戸惑い、アデューの動きが止まる

エリーが笑い涙をぬぐいながら言う
「だってアデューの顔が…すごく面白いんだもの」

「か…顔ぉ??
そっ…そうかなぁ〜???ちょっ…ちょとまてよぉ」
アデューは必死に顔に筋肉をほぐそうとする

アデューの顔は緊張のあまり、眉は細かく上下に揺れ、鼻もひくつき、口にも力が入りすこし尖がっているような顔になっていた

「も、もう大丈夫か?」
再びエリーに向き合うアデュー

「ふふっ…うん、もう大丈夫!」
笑ったお陰で、エリーの緊張もほぐれていた

「じゃ、じゃあもう一回…」
アデューはエリーの両腕を掴んだまま顔を逸らし、腰から上を大きく動かし、一つ、大きな深呼吸をした

エリーはその様子を愛おしく感じ、静かに見守っていた

アデューは再びエリーに向き合い、顔をゆっくり近づけ、傾けていった
先ほどより弱い力でエリーを掴んでいる腕は、
じょじょにエリーを引き寄せる

そしてその内に、二人の唇が初めてゆっくり重なっていった
アデューはゆっくり、強く唇を重ね続け、
腕を掴んでいた手を背中に回していき、少しずつきつく、エリーを抱きしめていった

エリーの呼吸が少し荒くなってきたのを感じ、
アデューは唇を離した

「っぁ…」
エリーから少しの吐息が漏れる

アデューは顔をエリーの肩の上にずらし、深呼吸を一つすると、そのままエリーを強く抱きしめ続けた


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エリーの地に行く、ペンダントが導く
ペンダントから光がでて、ミストロット出現

リューがかってに出てくる
リューが語りかける。
リュー達よ力を貸してくれ
異世界よりきたる悪しき者達に打ち勝つため
この世の平穏を永続的に保つため
力を合わせ成長しようと

仲間のミストロットも光りだす→リューが勝手にでてくる
搭乗。
リューは勝手に動き出す。
青い光に包まれて、光が収まったら、周りに失われた街が姿を現す。

リューから降りてペンダントに付いて行き城へ。ペンダントから映像が出てくる
ずっと前の王族からの映像〜父親が足止めして、母親が残党のじゃリュウ族に追われエリーが母親に捨てられ隠されるところ
全部ペンダント目線で。保育所の母が拾い上げる映像。
アデューの覗き込む顔、アデューの試合、試合後の告白、
ペンダントの持ち主が印象に残った時に記憶されるようだ。

全てが終わってエリーが泣き崩れる。
アデューがなだめに行き、サルトビも向かおうとするが、月心にいさめられる
エリーが泣き終わる。
アデューが戻ってくる、実の親に会った時は、自分もそうだったけど、子どものようになるんだよねと。

城で一泊
次の日、エリーがテレポを見つける
対になってるものに念をこめ、もう片方に触れるまたは触れてる人を触れるともう片方にテレポできるというもの

4人でリューの語りかけてきた意味を考える。
1000年に一度の邪竜族の襲来が終わっても、偵察も含め頻繁に邪竜族は力をつけながらアースティアに侵略しにくる。
現にエリーの両親もそういった邪竜族にやられた。
そういった侵略に備える、強いリュー使いを育てる。
より沢山のリューを発掘する。エルドギアとも通信することで、平和なアースティアを保つことを決意
この街で使用可能なテレポを活用し、その拠点にしたいとアデューは強く思う。
国の名前はガイヤ?アトランティス?
アデューも協力しろと月心が言う。お互い思いあってるのだろうと
なんで…って言ったら、あの映像見ればわかると。


パッフィーへ協力要請
第一話14歳→邪竜族討伐15歳→その後の3人旅→16歳→エリーと会う、世界一になる、故郷を見つける17歳→協力要請へ
城の途中でイズミと会う→王室へ→両親に挨拶
→駆け込んできたパッフィーがアデューにだけだきつく
他が目に入ってない。2年ぶりぐらいの再会。
パッフィーはまた旅に行きたい…

話は夕食の場で聞くことにし、強制的に泊まらせる
夕食の場で話す。ペアアイテムは誕生日に母からもらった涙型の水晶のイヤリング
夜アデューの部屋に訪問
守ってくれるって言ったことを覚えているか?→守れたと思ってる
アデューの胸に飛び込むも、マイヤーとかイズミとか他に守ってくれる人がいるじゃないかとそっと体を離す




リナへの要請
ケンとジェスも大きくなった。
リナにあって要請
快く受け入れる
ケンにアデューのことが好きかとからかわれて怒る
出店前にアデューに挨拶。一人で行く。
髪を下ろして化粧しておめかししたリナに、
今日はいつもと違うねとちょっとドギマギアデュー
ペアアイテムは天秤の皿



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腫れはひいたか?
見てるから、エリーはそこに座ってくれ

サルトビに股を開かれ患部を見せるエリー
恥ずかしさからか、顔はそっぽを向いていた

サルトビは股を覗き込むように対面に座り、エリーの白い内太ももに優しく触れた
「まだ少し腫れてるみたいだな…」
「解毒はできてると思うが、念のため腫れを引く軟膏を塗っておくぜ」

「うん…ありがとうサルトビ…」

サルトビは手袋を外し、限りなく足の付け根に近い患部に触れ、
あらわになった骨ばった細い指でクスリを丹念に塗りこんでいく
その時々で、サルトビの指がエリーの股に触れた
「…っ」
そのたびにエリーはそっぽを向きながら、声が外に漏れないように口の前に手の甲を置き、体をビクつかせていた

エリーが体をよじらせてるのに気付き、サルトビのいじわる心と下心が動いた
周りは日が落ちかけていた。少し暖かい風が吹き、雰囲気も悪くなかった

サルトビはエリーの右隣に座り、右手で薬を塗るフリをしながら、エリーの股間を触る回数を増やしていった。
エリーが次第に耐え切れなくなり、サルトビの肩に手をおき、体を預ける

「ここも腫れてるか…?」
サルトビはエリーの股間に指を伸ばし、
充血して盛り上がった小丘に軽く触れる

「…っぁ!」
エリーはサルトビの服を強く掴み、必死に声を抑え恥ずかしさに耐えていた

そのまま巧みなタッチでエリーの小丘を擦り続けるサルトビ

「サルト…ビ… 違っ… だめ…っ!」
エリーがサルトビの指の動きを阻止しようと右腕を掴むと、
サルトビはすかさずその手首を掴みエリーの動きを阻止した

左手で口を隠していたマスクを下げ、
エリーの肩を押さえながら強く口付けをし、舌を絡めた

「っ…ぁ… ハァ…ハァ…」
呼吸がし辛く、益々息が荒くなるエリー
しかし徐々に、サルトビに抵抗する力を弱めていった

押し倒そうと熱い口付けをしながらゆっくりと体を傾けていったサルトビだったが、
エリーの内太ももの赤く腫れた患部が見え、ふと我にかえる

エリーからそっと唇を離し、下に降り、エリーをおぶる
「悪かった…弱ってる時に…」




アデューとの

エリーの前に立ち、細い両腕をそっと両手掴む
見つめあう二人
アデューは少しかがむようにエリーに顔を近づけると、
ごく自然にエリーも目をつむった、
その様子を見て、アデューも目を閉じ、少し手に汗をかきながらエリーに口づけをした

エリーの両腕を掴んでいたアデューの両手は、次第に体の後ろに回され、
両腕でより近くにエリーを引き寄せるアデュー
長く…次第に強く…なってくるアデューの口づけにエリーの声が思わず漏れる
「ぁ…」

二人の心臓は次第に激しく高鳴り、お互いにその鼓動を感じあえるほどだった


エリーは緊張して体全身が硬直していた
「エリー…怖いか…?」

エリーが激しく首を左右に振る
「ううん…アデューだから… 平気…」


細い両腕を優しくつかんでいた、親指がふと硬くなったエリーの乳首に触れる

「あっ…」
潤んだ瞳のエリーから、吐息が漏れる
エリーは恥ずかしさからかただうつむき、アデューの服をギュっとつかんでいる
抑えがきかなくなったアデューはエリーの腰に手を回し、
エリーを抱き上げると優しくベッドへ横たわらせた


二人の呼吸が落ち着くまで、アデューは上から細いエリーの体を強く抱きしめた
「エリー…
ずっと…ずっと俺が守るから…!」

「アデュー…」
エリーはアデューの首筋の匂いを嗅ぎながら
汗ばんだ額のまま、軽くうなづいた







サルトビ編

エリーをチラっと見るサルトビ
すっかり寝入ってしまったようで、幸せそうに静かな寝息を立てていた
「ケッ…無防備な顔して寝やがって…」

一旦は目を逸らすも気になってしまったサルトビ
エリーをじっと見つめ、完全に寝ていることを確認し、
辺りを見渡し、人の気配が無いことを確かめ、
兜とマスクを外した。

静かにエリーに近づき、
横からその唇に己の唇を重ねるサルトビ

「っん…」
すぐ離す予定だったが、
あまりの気持ちよさに、サルトビが唇を重ね続けていると、
エリーが細目を開け、起きてしまった

「!!」
サルトビは咄嗟に唇を離し、後ずさるが、
既にエリーは完全に目を覚ましてしまっていた

エリーが目を覚ますと、目の前に見知らぬ男がいた。
黒い短髪はまっすぐに伸び、
鼻筋が通っており、口元もりりしい
覆面していた時には想像もつかないような、精悍な顔つきの青年がそこにはいた

「…サルトビ…?」


「ほれちまったんだ!お前に!!」

「俺と生涯を共にしてくんねぇか」

「忍者は素顔を見せちゃいけないんだが…。将来を約束した人の場合は別だ」



「やべっ…止まんねぇ…」

サルトビはそういうとエリーのク○を巧みな舌使いで攻めていった
「サルトビッ…!!だめっ!あっ…あぁっっぅ!!」

「だめっていうのは…いいの裏返しってことだよな…」
そういうと少し骨ばった、器用そうな人差し指と中指をその中に挿入していった

「あんっンンンン…っあっぁ!」

サルトビの指先が、エリーの中をたくみに動いていく
反応と見つつ、的確にエリーがよがる位置をスっていた

「あっあぁっ…サルトビッ…!だめっ!だめぇ!!っやぁ…!!あぁっ!あああ!!」

エリーが絶頂に達するかどうかの寸前で、サルトビは指を引いた
エリーの顔は紅潮しており、息は荒く、瞳は潤み赤くなっていた。

その様子を満足気に見つつ、
手についたエリーの蜜を舐めながら、サルトビはいじわるそうに
エリーの耳元に囁いた。
「へっ…おまえって…本当に俺のことが好きんだな…これからもっと気持ちよくなるぜ?耐えられるか?」

そう言うとサルトビはエリーの耳を軽く噛んだ

「んっ…!!」


「お願い…サルトビ…お願い…!もう…もうだ…めぇ…っ!!」

「へっそうか…よく頑張ったな…なら俺もいくぜっ…!」
サルトビも正直限界だった
エリーの中は絶頂を何度もむかえそうになり、激しくヒクついていた

「あ…あっ!あぁああっっっ!!!」
エリーが我慢していた分激しく絶頂に達すると、サルトビをきつく包み込んでいたものが
よりいっそう固く締め付け、激しく躍動した
それに耐え切れなくなり、サルトビも自身をエリーの中に放出した





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